映画『あの人が消えた』は面白い?つまらない?正直レビュー|『ブラッシュアップライフ』監督が仕掛ける、評価真っ二つの「ジャンル変貌」ミステリー

映画『あの人が消えた』は面白い?つまらない?正直レビュー|『ブラッシュアップライフ』監督が仕掛ける、評価真っ二つの「ジャンル変貌」ミステリー 映画

🎬 ひとことで言うと

「ジャンルそのものが二転三転する、映像の魔術。鑑賞後、すぐに『もう一度確認したい』と思わせる伏線だらけの体験型エンターテインメント。」


結論:この映画(ドラマ)は面白い?つまらない?

本作は、ドラマ『ブラッシュアップライフ』で緻密な演出を見せた水野格監督による完全オリジナル脚本のミステリーだ。映像に散りばめられたギミックは一級品で、観客を欺くことに全力が注がれている。

総合評価:🙂 ★6 / 10|伏線回収の快感と、急なジャンル変更の「疲れ」が同居する一作

「🙂 ★6」とした理由は、そのエンタメ性の高さの一方で、純粋なサスペンスを期待した人ほど「振り回されすぎて疲れる」と感じるリスクがあるからだ。しかし、監督の遊び心に乗れる人にとっては、これほど爽快などんでん返し映画も珍しい。

あらすじと作品の特徴(ネタバレなし)

「次々と人が消える」という不穏な噂がある謎めいたマンション「クレマチス多摩」。高橋文哉演じる配達員の丸子は、密かに憧れる住人・小宮(北香那)をストーカーから守ろうと奔走するが、気づけば不可解な事件の渦中に引きずり込まれていく。

本作の最大の特徴は、「サスペンスとして観ていたはずが、別の何かへと変貌を遂げる」ジャンルレスな展開にある。すべての違和感がラストに向けて集約されていく構成は、完全オリジナル脚本ならではの自由度の高さが光っている。

正直レビュー:ここが良かった・悪かった

良かった点:伏線回収の鮮やかさとキャストのアンサンブル

主演の高橋文哉をはじめ、北香那、染谷将太、田中圭といった実力派が集結。全員が何かしら怪しい空気を纏っており、観客の疑心をこれでもかと煽ってくる。2時間弱という上映時間の中に無駄なシーンがほとんどなく、監督らしい伏線の張り方と、それを一気に回収する疾走感は文句なしに素晴らしい。

気になった点:急激な舵取りによる緊張感の欠如

サスペンスからコメディ、あるいは別の色合いへと劇的にトーンが変わるため、物語への深い没入感を求める人にとっては、緊張感が削がれる要因になりかねない。「面白い試み」ではあるが、どんでん返しそのものに飽きている人や、より情緒的な重厚さを求める人には、やや力技が過ぎるように映る可能性もある。

向いている人・向いていない人の特徴

向いている人

  • 『ブラッシュアップライフ』のような、伏線回収の快感がある作品が好き
  • ジャンルが途中で激変する、予測不能なジェットコースター展開を楽しめる
  • 短い上映時間の中で、スッキリとまとまった脚本を求めている

向いている人

  • 最初から最後まで一貫した、重厚でシリアスな社会派サスペンスが見たい
  • ギャグやコメディ要素が入ることで、物語の緊張感が壊されるのが苦手
  • 映像のギミックよりも、登場人物の心情の深掘りを重視する

深掘り考察:丸子夢久郎が辿り着いた「死」と「新生」の真実

名前に隠されたシックスセンスと主人公の死の予兆

主人公・丸子夢久郎(まるこ・むくろう)という名前に、映画『シックス・センス』の主人公「マルコム・クロウ」が重ねられている点は、水野格監督による大胆な伏線です。しかし、本作が『シックス・センス』と決定的に異なるのは、丸子が最初から幽霊だったわけではないという点です。物語の途中で、彼はマンションの住人や小宮を守るために戦い、非情にも命を落としてしまいます。この名前は「最初から死んでいる」ことの示唆ではなく、物語のどこかで彼が「死者側の存在」へと変貌し、観客が観ている世界が「現実」から「フィクション」へと移行することを予告する、不吉でクレバーな遊び心だったと言えます。

本編を凌駕する遊び心とスパイ転生の幕開け

本作の最も衝撃的な仕掛けは、映画『あの人が消えた』の本編が終わると同時に、全く別の作品であるかのように『スパイ転生』のオープニングが始まる演出にあります。成仏したはずの丸子が目を覚ますと、そこは豪華なタキシードに身を包んだS級スパイの世界。さらに、憧れの女性であった小宮が悪役令嬢として登場するに至り、物語は「異世界転生」と「悪役令嬢」という“なろう系”の人気ジャンルへと完全な変貌を遂げます。この強引なまでのジャンル転換は、単なるオマケの域を超え、これまで観てきた現実の惨劇がすべて『スパイ転生』が始まるための「壮大な前置き」だったのではないかという、メタ的な錯覚すら抱かせます。

小宮の小説世界がもたらす丸子への最高の報酬

丸子が転生した先は、小宮が執筆していた小説『スパイ転生』の世界そのものでした。コロナ禍以降、孤独で辛い暮らしを強いられてきた丸子にとって、唯一の心の支えは配達員として見守る小宮の存在と、彼女の描く物語でした。現実では誰にも看取られることなく命を散らした丸子ですが、死してなお、自分が望む世界へと生まれ変わることができたのです。大好きだった小説の結末を、脇役の配達員としてではなく「主人公」として自ら見届ける。主人公が途中で命を落とすというミステリーの禁じ手を使いつつ、それを最高の多幸感へと着地させる、これ以上ないほど鮮やかで優しい物語の閉じ方です。

結末のその先にあるハッピーエンドと魂の完結

丸子の人生は、現実のマンションでの死によって一度幕を閉じました。しかし、物語の「その後」において、彼は最愛の人が生み出した世界の一部となり、永遠の命を得たとも言えます。異世界転生という現代的なギミックを取り入れることで、悲劇を回避し、観客に「これなら救われる」という納得感を与える構成は見事です。地獄のような現実を生き抜いた丸子は、今、憧れの小宮と共に、自らが望んだ理想のフィクションの中で幸せに暮らしているのでしょう。あの凄惨な戦いの先に、新しい物語の「第1話」が待っていたことこそが、本作が観客に贈った最大のサプライズなのです。

総評:観るべきか迷っている方へ

本作は、監督が仕掛けた「映像の嘘」を積極的に楽しみ、二度目の鑑賞で答え合わせをしたい知的なエンタメ好き向けの作品だ。重厚なミステリーを期待すると足元を掬われるが、その振り回される感覚こそがこの映画の正解。まずは予備知識なしで、監督の罠にどっぷりと浸かってみてほしい。

※本作品はAmazon Prime Videoで配信中。 プライム会員は追加料金なしで視聴可能です。(一度観終えた後、もう一度最初から観返したとき。何気ない日常の風景すべてに「別の意味」が宿っていたことに気づき、鳥肌が立つ。

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※配信状況は変更される場合があります。最新情報は公式サイトをご確認ください。


🎥カメラくん
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