🎬 ひとことで言うと

社会不適合者な殺し屋コンビが、不条理な世の中を拳と弾丸でサバイブする、新時代の青春アクション
結論:映画『ベイビーわるきゅーれ』は面白い?つまらない?
「ゆるい日常」と「ガチのアクション」の落差に脳が揺さぶられる、好みの分かれる怪作です。
アクションは本物、好みが合えばかなり刺さる青春怪作
本作が「刺さる」理由は、その極端すぎる二面性にあります。物語の多くを占めるのは、やる気のない女子二人の「社会に馴染めない愚痴」が漏れ出す日常パート。しかし、いざ戦闘が始まれば一変、一切の躊躇なく急所を叩き潰す超絶アクションが炸裂します。この脱力感と緊迫感の振り幅を楽しめるかどうかが、本作を愛せるかの最大の分岐点です。
監督・脚本・音楽をすべて一人でこなした阪元裕吾監督が、製作費の制約を逆手にとって生み出したのは、セリフで説明しない・BGMで感情を誘導しない・カメラを引かないという徹底した「引き算の演出」です。その結果、スクリーンに残るのは二人の俳優の生身の存在感と、アクションシーンの圧倒的な物理的リアリティだけ。
2021年の劇場公開時はミニシアター規模のスタートでしたが、口コミとSNSで拡散し、シリーズ化・Netflix配信・海外映画祭出品へとつながる快挙を成し遂げました。
「邦画のアクションはここまでできる」という証明として、本作が持つ意義はスコア以上に大きいと感じています。
▶ Prime Videoで視聴する※本ページはプロモーションを含みます。
基本情報
| 配信 | Amazon Prime Video ほか |
|---|---|
| 公開/放送開始 | 2021年7月30日(劇場公開) |
| 上映時間 | 94分 |
| ジャンル | アクションコメディ |
あらすじと作品の特徴(ネタバレなし)
女子高生を卒業したばかりのちさと(髙石あかり)とまひろ(伊澤彩織)は、殺し屋協会から「社会に馴染め」という理不尽な命令を下されます。
組織が用意した部屋で不慣れな共同生活を送り、慣れないアルバイトに奮闘する二人。社会のルールに翻弄され、不器用な日常を送る一方で、彼女たちの裏の顔は、狙った獲物を確実に仕留めるプロの暗殺者でした。
そんな二人の前に、不気味なヤクザの親子が立ちはだかり、日常の不満を爆発させるかのような壮絶な死闘の幕が開きます。
監督は阪元裕吾。脚本・音楽も兼任し、低予算ながら全編を独特の空気感でまとめ上げた本作は、公開直後からアクション映画ファンの間で熱狂的な評価を獲得。髙石あかりと伊澤彩織のコンビは、本作をきっかけに日本映画を牽引するスターへと駆け上がることになります。
正直レビュー:ここが良かった・悪かった
良かった点:スター誕生の瞬間と、邦画の限界を超えたアクション
- 髙石あかり・伊澤彩織のバディ感今やスターダムを駆け上がる髙石さんの「器用さと危うさ」、スタント出身の伊澤さんの「重力を無視した動き」。この二人の相性は、邦画史に残る心地よさです。
- 日本映画の枠を超えた肉弾戦銃撃戦はもちろん、狭い室内での近接格闘はカメラワークを含め、一切の妥協がありません。アクション映画好きなら食い入るように観てしまうはずです。
気になった点:ストーリーよりも「空気感」重視のつくり
- 日常パートのテンポ感映画としての重厚なクライムサスペンスを期待すると、日常シーンの「ダラダラした空気」を退屈だと感じてしまう可能性があります。
- 設定のリアリティ殺し屋が一般社会に紛れるという設定に対し、徹底したリアリティや警察の緻密な動きを求める人には、少しシュールに映るかもしれません。
向いている人・向いていない人の特徴
向いている人
- ちさととまひろの「ゆるい会話」をオフの日感覚で楽しみたい人
- 世界に通用するキレキレのアクションを、日本映画で体感したい人
- 社会に馴染めない若者の葛藤を、バイオレンスで昇華してほしい人
向いていない人
- 緊張感が最初から最後まで持続する、重厚なクライムサスペンスを求めている人
- 日常パートの「ダラダラした空気」を退屈だと感じてしまう人
- 殺し屋設定や組織の描写に、強い現実味を求めている人
原作はある?続編は?
原作小説・コミックなどの原作は存在せず、阪元裕吾監督によるオリジナル脚本です。「殺し屋×社会不適合者×バディもの」という設定は本作のために書き下ろされたもので、その独自性が高く評価されています。
本作の大ヒットを受け、シリーズは続編へと発展しています。2023年公開の『ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー』では神村兄弟(丞威・濱田龍臣)が強烈な印象を残し、2024年公開の『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』では池松壮亮が加わり物語に新たな深みをもたらしました。3作合わせて観ることで、ちさととまひろの関係性がどう変化・深化していくかをじっくり追うことができます。
また、本作はNetflixでの全世界配信も果たしており、海外のアクション映画ファンからも高い評価を受けています。低予算の日本映画がここまでのリーチを獲得したケースは非常に珍しく、シリーズとしての価値はますます高まっています。
深掘り考察:不条理な社会と向き合うための「逃げ場」としてのバディ
「普通」になれないだるさと居心地の悪さ
本作の根底に流れているのは、組織から「普通になれ」と強要される若者の、静かで切実な息苦しさです。
ちさととまひろにとって、殺し屋は天職である以上に、それ以外の生き方を選べないという消極的な選択の結果でもあります。バイト先での噛み合わない会話や、社会の細かいルールにどうしても適応できない彼女たちの姿は、現代を生きる多くの人が抱く「社会への居心地の悪さ」を代弁しています。
この生きづらさが、ドラマチックな悲劇としてではなく、どこまでも「ただただ、だるい日常」として描かれるからこそ、観る者の心にじわじわと浸食してくるのです。
特筆すべきは、この「馴染めなさ」が誇張されず、愚痴としてぼそぼそと漏れ出す点です。就職活動の面接で浮いてしまう描写や、コンビニバイトで空気が読めない場面など、どれも笑えるほど些細でリアルな失敗ばかり。非日常の「殺し屋」という設定を持ちながら、等身大の若者としての共感を積み上げる手法が、この作品の底力になっています。
実戦感覚を徹底したアクションの設計思想
本作がカルト的な支持を得た決定的な魅力は、従来の邦画の限界を突破した、生々しいアクション描写にあります。
特にクライマックス、渡部龍平さん演じる強敵との死闘は、一切の無駄な演出がありません。伊澤彩織さんの身体能力を活かした近接格闘は、派手な立ち回りというより「相手を確実に仕留めるための合理的かつ狂暴な動き」に徹しています。
日常パートの脱力感のすぐ隣に、こうした「実戦寄りの殺し」が平然と置かれているアンバランスさこそが、本作を唯一無二の存在にしている最大のスパイスです。
また、カメラワークにも注目してほしい点があります。アクションシーンでは無駄なカットを極力減らし、できる限り長回しで動きを追い続けています。これにより、演者の身体能力がそのまま画面に刻まれ、「本当にやっている」というリアリティが担保されています。スタント出身の伊澤彩織さんを起用した意味が、このカメラの選択によって最大限に引き出されているのです。
生活を邪魔する理不尽な大人たちとの遭遇
敵役として登場するヤクザの親子は、二人にとって高い志を持つ宿敵ではなく、「自分たちの平穏な生活を邪魔する厄介な大人」に過ぎません。
彼らが振りかざす理不尽な暴力や身勝手な論理は、社会のルールに馴染めない二人にとっての、もう一つの生きにくさの象徴でもあります。思想的な対峙があるわけではなく、ただ自分の領域を守るために、目の前の邪魔者を排除する。
二人でいること自体が、この社会からの小さな避難所になっているからこそ、その静かな聖域を土足で荒らす者には、容赦のない排除が行われるのです。
この構図は、従来のアクション映画における「強大な悪を倒す英雄」とはまったく異なります。ちさととまひろには世界を救う使命もなく、正義感もありません。
ただ「今日の平和な夜を取り戻す」という、ひどく小さな目的のために命がけで戦う。その矮小さと必死さのギャップが、本作における暴力描写をどこか切なく、そして愛おしいものにしています
変わらない日常を「まあ、やるしかない」と受け入れる余韻
物語の終盤、強敵を退け、血の海を越えた二人が再び辿り着いたのは、相変わらずの「パッとしない日常」でした。
劇的な成長も人生の大逆転もなく、彼女たちは明日からもまた、不器用な自分を抱えたまま、このぬるい日常を泳いでいかなければなりません。
ラストシーンで見せる二人の表情には、強い覚悟というよりは、「まあ、二人でいるなら、これでいいか」という諦念混じりの肯定が宿っています。この「どうしようもなさを抱えたまま続いていく日々」への着地こそが、この映画らしい終わり方なのだと思います。
多くの映画は「戦いを経て主人公が変わる」という成長物語の型を踏みます。しかし本作はその型を静かに、しかし確実に裏切ります。変わらないことが、この二人の強さであり、居場所の証明でもある。そう気づいたとき、エンドロールが流れる中でじわじわと込み上げてくる感情の正体が、少しだけわかる気がします。
総評:観るべきか迷っている方へ
本作は、緻密なストーリーラインよりも、キャラクターの空気感と職人技のアクションを愛でるための作品です。
社会のルールには馴染めない若者たちが、圧倒的な暴力で自分たちの居場所を切り拓く姿は、低予算の枠組みを破壊するほどの凄まじいエネルギーに満ちています。
ハマれば生涯の一本になる、唯一無二の青春アクションをぜひ体感してください。
本作品はAmazon Prime Videoで配信中。
プライム会員は追加料金なしで視聴可能です。
※配信状況は変更される場合があります。最新情報は公式サイトをご確認ください。

続編では“バイトの殺し屋コンビ”が現れ、ちさまひに挑みます。



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