🎬 ひとことで言うと

死に方の発想力は突き抜けている。悪趣味なのに、目が離せなかった。

殺戮の裏に兄弟の確執もある。でも、家族の物語は深まりきらない。
結論:映画『THE MONKEY/ザ・モンキー』は面白い?つまらない?
『THE MONKEY/ザ・モンキー』は、ゼンマイ式の猿がドラムを叩くたびに、予想外の惨劇が起こるホラー映画だ。死に方の発想力は突き抜けており、次はどんな惨劇が待っているのかと先が気になる。
ただ、死の演出が続くうちに驚きは薄れ、ホラーとコメディの配分にも落ち着かなさが残る。兄弟の確執や親子関係も描かれるが、感情移入できるほど掘り下げられていない。強烈な見せ場はあるものの、物語全体の満足度を押し上げるには至らなかった。
死に方は強烈。でも、物語は深まりきらない。
※本ページはプロモーションを含みます。
基本情報
| 配信 | Amazon Prime Video |
|---|---|
| 公開/放送開始 | 2025年9月19日(日本公開) |
| 上映時間 | 98分 |
| ジャンル | ホラー、ブラックコメディ、スプラッター |
あらすじと作品の特徴(ネタバレなし)
双子の少年ハルとビルは、父が遺した荷物から、ぜんまい式でドラムを叩く猿のおもちゃを見つける。その頃から周囲で不慮の事故死が相次ぎ、ハルは猿が死に関わっているのではないかと疑う。壊して捨てても、猿はいつの間にか元の姿に戻って現れる。
やがて兄弟は猿を枯れ井戸に葬った――はずだった。それから25年、兄弟は疎遠になり、猿が戻れば身近な人が死ぬと恐れるハルは、息子ピーティーとも距離を置いていた。ところが、伯母の死をきっかけに、ハルは猿が戻ってきたことを確信する。
原作はスティーヴン・キングの短編「猿とシンバル」。監督・脚本はオズグッド・パーキンス。テオ・ジェームズが成長したハルとビルを一人二役で演じ、日本ではR15+指定となっている。

正直レビュー:ここが良かった・悪かった
良かった点:悪趣味に振り切った死の見せ方
- 死に方の発想力が突き抜けている常識外れの死が次々と登場し、「そう来るか」と驚かされる。予想を超える発想が本作最大の武器だ。
- ドラムの音が生む期待と裏切り音が鳴れば誰かが死ぬ。次の犠牲者や死に方を予測できない展開が、テンポのよさにつながっている。
- 少年期と25年後、それぞれの一人二役 少年期はクリスチャン・コンヴェリー、25年後はテオ・ジェームズがハルとビルを一人二役で演じる。どちらも演じ分けに違和感がなく、見終わってから一人二役だったことに気づいたほど自然だった。
気になった点:笑い切れないブラックユーモアと、浅い家族の物語
- ホラーにもコメディにも振り切れない 怖さは弱い一方、流血描写は生々しく、笑いとしても乗り切れない。悪趣味さが持ち味なのに、笑いと嫌悪がうまくかみ合っていない。
- 死の演出に慣れてしまう 序盤は意外性に驚かされるが、惨劇が続くにつれて新鮮味が薄れる。発想は強烈でも、繰り返すうちにインパクトが弱まっていく。
- 家族ドラマの掘り下げが浅い 兄弟の確執や親子の距離感は描かれるものの、人物の感情や関係性が深まる前に物語が進んでしまう。家族の物語としては物足りなさが残る。
向いている人・向いていない人の特徴
向いている人
- グロければグロいほど好きな人
- 突飛で予想外の死に方を楽しめる人
- ブラックユーモアの効いたスプラッターが好きな人
- スティーヴン・キング原作の大胆な映画化に興味がある人
向いていない人
- じわじわと迫る本格的な恐怖を求める人
- グロテスクな流血や身体破壊が苦手な人
- 呪いのルールや謎が明確に説明される作品が好きな人
- 家族ドラマで泣ける展開を期待している人
映画『THE MONKEY/ザ・モンキー』と原作の違い
原作の不気味さをブラックコメディへ
原作は、スティーヴン・キングの短編「猿とシンバル」。1980年に雑誌『Gallery』で発表され、改稿を経て1985年の短編集『Skeleton Crew』に収録された。原作の猿が鳴らすのは、ドラムではなくシンバルだ。また、ハルとビルは双子ではなく兄弟で、映画ほど険悪な関係には描かれていない。
映画版では、双子という設定や兄弟の確執を加え、死の演出も派手で突飛なものへと変更。原作の不気味な恐怖を、血まみれのブラックコメディへと大胆に作り変えている。なお、シンバルがドラムに変更された理由について、オズグッド・パーキンス監督は『トイ・ストーリー』に登場する猿のおもちゃとの兼ね合いがあったと語っている。
映画と原作で異なる恐怖
映画は突飛な死の演出とブラックユーモアが前面に出ている一方、原作では猿のおもちゃがもたらす不気味さと、不可解な死の恐怖が印象に残る。同じ題材でも、映画は視覚的なインパクトを強め、原作は文章ならではの不穏さを際立たせている。
原作を収録した短編集『Skeleton Crew』もある。なお、調べた範囲では日本語版は見つからず、ここで紹介するのは英語版となる。
Skeleton Crew: A riveting, dark story collection from the No. 1 bestseller, featuring ‘The Mist’ and ‘The Monkey’ (English Edition)
スティーヴン・キングの短編集。『猿とシンバル』を収録した英語版です。
※リンク先はAmazonの商品ページです。英語版のため、内容は英語での収録となります。
深掘り考察:人の死を笑いに変えた先に何が残るのか
人の死が笑いに変わる仕掛け
ドラムが鳴れば誰かが死ぬ。そのルールが分かると、気になるのは死が起きるかどうかではなく、次はどんな死に方が待っているのかになる。
しかも、描かれる死は常識外れで、あまりの突飛さに恐怖より先に笑いが出ることもある。本来なら悲劇であるはずの死が、予想を裏切るオチとして扱われているのだ。
本作の悪趣味さは、グロテスクな死を並べるだけではない。次の死を待ち構え、思いがけない展開に驚き、ときには笑ってしまう。人の死を楽しむつもりはなくても、いつの間にか次の惨劇を期待してしまう。 そこに、本作ならではの皮肉がある。
猿が怖いのは、死が人の願いどおりに起きないこと
ハルは、いじめてくるビルを消したい一心で猿のネジを巻いた。しかし、死んだのは母だった。大人になったビルも、ハルへの復讐を果たそうと猿を使うが、狙いどおりに事が運ぶわけではない。関係のない人々まで犠牲になり、死を思いどおりに操ることはできない。
猿には、誰かを罰する意図も、人間の願いをかなえる意思も見えない。だからこそ、誰が悪かったのかを決めても、復讐を果たそうとしても、起きてしまったことは変わらない。ハルは罪悪感を抱え、ビルは復讐に執着するが、二人の思いが母の死を納得できる出来事に変えることはない。
そして、ようやく兄弟が和解に近づいた直後、ビルは命を落とす。過去と向き合い、関係を修復しようとしても、その努力が報われるとは限らない。猿がもたらす死の恐ろしさは、命を奪うことだけではない。人間の事情や感情などお構いなしに、理不尽な出来事を起こし続けることにある。
死の見せ方が、家族の悲しみを薄めてしまう
本作は、誰かが死んでも悲しみに浸る間もなく、次の惨劇へと進んでいく。このテンポがブラックコメディとしての勢いを生んでいる一方、死によって何が失われたのかを感じる時間は少ない。
そのため、母を失った兄弟の傷や、息子と距離を置くハルの悩みも、十分に伝わる前に物語が進んでしまう。突飛な死の演出は強烈だが、家族の悲しみを描くための積み重ねが足りない。
殺戮の見せ方には強烈な個性がある。しかし、家族の物語は、その勢いに押されて深まりきらない。 これが、本作で惜しかったところだ。
猿を手元に残したハルが選んだこと
ビルの死後、ハルとピーティーは猿を捨てるのではなく、自分たちの手元に置き、二度とゼンマイを巻かせない道を選ぶ。猿の危険そのものを消すことはできない。それでも、再び誰かの手に渡って惨劇が起きるのを防ごうとする。
しかし、映画は二人が立ち去ったあと、チアリーダーたちを乗せたバスをめぐる惨劇を見せて終わる。危険を管理しようと決めても、理不尽な死がなくなるわけではない。ひとまず危機を乗り越えたかに見える結末を、最後の悪趣味なオチがひっくり返す。
この終わり方は、家族との関係に向き合うことと、死の不条理から逃れられることは別だと感じさせる。一方で、家族の物語に余韻を残すよりも、最後までブラックユーモアを貫くことを優先した結末ともいえる。死の演出には徹底して振り切れているが、家族ドラマの着地は深まりきらない。 そのアンバランスさが、本作の長所であり、惜しいところでもある。
総評:観るべきか迷っている方へ
『THE MONKEY/ザ・モンキー』は、突飛な死の演出とブラックユーモアが魅力のホラー映画。ただし、物語や家族ドラマの掘り下げには物足りなさが残る。
グロテスクな惨劇を楽しめるかどうかで評価が分かれる作品だ。苦手な人にとっては、最後まで苦痛が続くかもしれない。

人が死にまくるのに、妙な爽快感があるんよ。
本作はAmazon Prime Videoで配信中。
プライム会員は追加料金なしで視聴可能です。
※配信状況は変更される場合があります。最新情報は公式サイトをご確認ください。


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