ドラマ『めんつゆひとり飯』は面白い?つまらない?正直レビュー|起伏はない。でも、その居心地の良さだけは本物だった

ドラマ『めんつゆひとり飯』は面白い?つまらない?正直レビュー|起伏はない。でも、その居心地の良さだけは本物だった ドラマ

🎬 ひとことで言うと

シネくま
シネくま

物語は進まない。人間関係も変わらない。それでも13話、飽きずに観られてしまう。

シネうま
シネうま

「何も起こらない」を、ここまで丁寧に作り込んだドラマも珍しい。


結論:ドラマ『めんつゆひとり飯』は面白い?つまらない?

『めんつゆひとり飯』は、物語が進むドラマではない。登場人物はほとんど変わらず、人間関係も大きくは進展しない。それでも最後まで観てしまうのは、何も起こらない時間を心地よく見せる設計が徹底しているからだ。

露のズボラも、めんつゆのレシピも、保ヶ辺の恋愛エピソードも、大きな山場を作らないまま淡々と流れていく。派手さのなさそのものが、この作品の売り物になっている。ただ、その狙いは理解できても、ドラマとして面白さに結びついているとは思えなかった。繰り返しの安心感より単調さが勝り、人間ドラマとしての積み重ねも乏しい。居心地の良さはあるが、作品としての満足度は高くなく、評価は厳しめになった。

⚠️4 / 10
★★★★☆☆☆☆☆☆

「これでいい」を肯定するドラマ。

▶ Prime Videoで視聴する

※本ページはプロモーションを含みます。

基本情報

配信Amazon Prime Video ほか
公開/放送開始2023年4月1日(放送開始)
話数全13話
ジャンルコメディ、グルメ

あらすじと作品の特徴(ネタバレなし)

通販会社YARANAIの経理部で働く独身OL・面堂露(鞘師里保)は、筋金入りのめんどうくさがり屋。「美味しいものだけは絶対に妥協しない」という信念のもと、料理界のオールインワン「めんつゆ」を使った手軽なレシピを次々と生み出していく。

職場には露と対照的な同僚たちが揃う。几帳面な完璧主義者の同期・十越いりこ(山口まゆ)、女性関係のトラブルを炭水化物と脂質で埋め合わせる保ヶ辺勉(加治将樹)、保ヶ辺に思いを寄せる後輩・白田舞(岡本夏美)、そして極端な口下手で通訳なしには意思疎通できない社長・屋良内南藻(ふせえり)。

物語では、露の心に現れる「十越さんの幻影」との掛け合いも見どころの一つ。各話は「その1」「その2」の2本立てで、めんつゆレシピと個性的な同僚たちとの日常を描いていく。

正直レビュー:ここが良かった・悪かった

良かった点:鞘師里保が”芝居に見えない芝居”を成立させている

  • 鞘師里保の、芝居をしていないように見える芝居 ─ 露は感情を大きく爆発させる人物ではない。演技が少しでも作り物っぽく見えると一気に冷めてしまう役どころだが、力の抜けた間や視線の置き方まで自然で、この作品の空気そのものになっている。
  • 保ヶ辺の痩身イケメン化ギャグ ─ 現実離れした設定なのに、このドラマの空気だけは壊さない。抑えめなトーンで統一された作品の中で、唯一、漫画らしい誇張が許されているのがこのくだりで、ちょうどいい息抜きになっている。
  • 実際に真似できるレシピ設計 ─ 材料も工程も現実的な分量・手順に収まっていて、深夜に見ながら「これなら今夜作れる」と思わせる説得力がある。

気になった点:最後まで観ても、ほとんど何も変わらない

  • ドラマとしてはほぼ成長しない ─ 露をはじめ、誰ひとり第1話と最終話で大きく変わらない。「何も起こらない」を狙った設計だとしても、積み重ねが一切ないぶん、通しで観ると単調さは否めない。
  • 話の型がほぼ固定 ─ 日常の出来事をきっかけに料理を思いつき、めんつゆで作る。「心の十越さん」と掛け合いをしながら完食する。この流れが最終話まで大きく変わらないため、中盤以降は展開の予測がついてしまう。
  • 実名商品の存在感が強い場面がある ─ 劇中で「つゆの素」を絶賛する場面が続くと、ドラマの説得力よりも商品PRの色が強く出るように感じる瞬間もある。

向いている人・向いていない人の特徴

向いている人

✅ 向いている人
  • 仕事終わりに頭を空っぽにして観たい人
  • 「ズボラ飯」や時短レシピに日頃から共感している人
  • 鞘師里保のファンで、初主演作としての彼女を観たい人
  • 刺激より、現状維持の心地よさを求めている人

向いていない人

✗ 向いていない人
  • しっかりとした人間ドラマや関係性の変化を求めている人
  • 13話かけて何かが積み重なっていく展開を期待している人
  • 同じ展開パターンが繰り返されるのが気になるタイプ

原作漫画との違いは?

本作の原作は瀬戸口みづきによる4コマ漫画『めんつゆひとり飯』。めんつゆを使ったズボラレシピと、主人公・面堂露の日常をテンポ良く描く作品で、物語性よりもアイデアレシピと軽妙なギャグが魅力となっている。保ヶ辺が仕事のしすぎで痩せてしまうくだりも、もともと原作にあるエピソードだ。

ドラマ版では4コマを20分超のエピソードへ広げるため、レシピをひらめいた際の演出や「心の十越さん」の実写化、エンディングダンスなどオリジナル要素が追加された。原作では首から上だけの登場が基本の「心の十越さん」も、ドラマ版では全身で実写化されており、罪悪感が原作よりも誇張された形で描かれている。

深掘り考察:”何も起こらない”は、なぜ最後まで観られるのか

停滞を、あえて設計する

露が体現する生き方は、選択肢を省き、工程を最小限にし、人間関係すら動かさないことで成り立っている。5人という限られた登場人物、変化の乏しい関係性、繰り返される同じ型のオチ――物語としては物足りなく映るかもしれない。ただ、深夜ドラマにも様々なスタイルがあるなかで、本作は刺激や展開よりも「余白」や習慣的な心地よさを優先する方向を選んだ作品に見える。現状維持そのものを価値として提示している点が、この作品らしさと言えるだろう。

毎回同じだからこそ安心して観られる

本作は、毎回ほぼ決まった流れで進んでいく。職場での些細な出来事から料理を思いつき、「心の十越さん」とのやり取りを挟んで完成させる──視聴者は、露が最終的にめんつゆへたどり着くことを、最初から知っている。だからこそ本作は、何ができあがるかを追いかけるドラマではない。目分量で適当に手を動かす露と、その様子に逐一ツッコミを入れる心の十越さん——その作っている最中のやり取りこそが見どころになっている。ドラマというより、毎週決まった時間に観る料理番組やバラエティに近い感覚で楽しめる。13話という長さでも最後まで観続けられるのは、その気安さゆえだろう。

心の十越さんは、露の理性を可視化した存在

露の心に現れる「十越さん」は、彩りや栄養バランスを重視する、露とは正反対の価値観を持つ存在だ。料理を前にするたび「ちゃんと作った方がいい」と正論を投げかけるが、露を本気で止めることはない。その「正論」は、露自身の理性であると同時に、「栄養を考えろ」「彩りを考えろ」といった、世間が押しつけてくる暗黙の基準を映した声でもある。

露もまた、栄養や手間を軽視しているわけではない。「今日は面倒だから、これでいい」と自分に言い訳をしながら、結局はめんつゆを選ぶ。そのやり取りは、露の中にある理性と本音の会話のように映る。

視聴者も「分かっている。でも今日は面倒なんだよ」と思う日は少なくない。十越さんは主人公を一方的に責める存在ではなく、視聴者が抱くであろう疑問を先回りして口にする代弁者だ。もし十越さんが存在しなければ、露の選択はただの手抜きとして映っていたかもしれない。その一言があることで、視聴者は安心して露のズボラさを受け入れられる。

タイトルは『ひとり飯』だが、露は決して一人では料理をしていない。隣には「心の十越さん」がいて、その掛け合いが単調になりがちなレシピ紹介を心地よい会話劇へと変えている。

「めんつゆ」が肯定しているのは、手抜きではなく最適化

露は料理が嫌いなわけではない。むしろ美味しいものへのこだわりは強い。それでも献立を考え、調味料を揃え、工程を増やす手間だけは徹底して避け、めんつゆに頼る。

だから露の行動は単なるズボラではなく、労力と満足度を天秤にかけた結果とも言える。本作が描いているのは「丁寧な暮らし」ではなく、「最低限の手間で最大限の満足を得る」ための工夫だ。

タイトルの「めんつゆ」は、そんな露の価値観を象徴する存在なのだろう。

総評:観るべきか迷っている方へ

この作品は、物語の面白さよりも「居心地の良さ」を優先したドラマだ。その結果、ドラマとしての起伏は失われたが、深夜ドラマとしての居心地は手に入れた。

ドラマとして積極的におすすめする作品ではない。ただ、肩の力を抜いて眺められる深夜ドラマとしては、この作品ならではの居心地の良さがある。

シネうま
シネうま

めんつゆで十分。そんな露の価値観を最後まで貫いたことこそ、このドラマらしさだった。


STREAMING

本作はAmazon Prime Videoで配信中。
プライム会員は追加料金なしで視聴可能です。

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シネくま
シネくま

心の十越さんとの掛け合いは、シーズン2でも健在。

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