『十角館の殺人』は面白い?つまらない?正直レビュー|綾辻行人の名作ミステリーを実写化した結果

『十角館の殺人』は面白い?つまらない?正直レビュー|綾辻行人の名作ミステリーを実写化した結果 ドラマ

🎬 ひとことで言うと

シネくま
シネくま

『十角館の殺人』は、初見でも最後まで引っ張ってくれるミステリー。

シネうま
シネうま

最後まで見やすかったし、気づけば5話を一気に観てた。


結論:『十角館の殺人』は面白い?つまらない?

原作を知らない初見でも、先の展開が気になって最後まで楽しめるミステリーだった。孤島と本土、それぞれで進む物語が少しずつつながっていく構成もよく、謎が明らかになっていく過程には素直に面白さがある。

ただ、真相までたどり着いたあとに振り返ると、「そこまで都合よく成立する?」と感じる部分もある。観ている間はしっかり楽しめる。でも、観終わったあとに細かく考えると引っかかるところが残る作品というのが、正直な評価だ。

🙂6 / 10
★★★★★★☆☆☆☆

ミステリーとして楽しめるが、最後は少し強引。

▶ Prime Videoで視聴する

※本ページはプロモーションを含みます。

基本情報

配信Amazon Prime Video ほか
公開/放送開始2024年3月22日(配信開始)
話数全5話
ジャンルミステリー、サスペンス

あらすじと作品の特徴(ネタバレなし)

孤島・角島に建つ、十角形の奇妙な館「十角館」。そこへK大学ミステリ研究会に所属する男女7人が合宿のため訪れる。外界から隔絶された島で、彼らはそれぞれ思い思いに過ごしていたが、やがて館をめぐる不穏な出来事が起こり始める。

一方、本土では、かつてミス研に所属していた江南孝明(奥智哉)のもとに、半年前に亡くなったはずの建築家・中村青司から一通の手紙が届く。そこには、青司の名前とともに、事件を予感させる不穏なメッセージが記されていた。

手紙の謎が気になった江南は、ミステリ作家・島田潔(青木崇高)とともに中村青司にまつわる過去を調べ始める。島では閉ざされた環境の中で7人の身に異変が起こり、本土では過去の事件を追う調査が進んでいく。やがて、島と本土で別々に進んでいた物語が少しずつつながり始める。

正直レビュー:ここが良かった・悪かった

良かった点:初見でも引き込まれる構成

  • 孤島と本土を行き来する構成がうまい島で起きている事件と、本土で進む調査が並行して描かれるため、それぞれの展開が気になって飽きにくい
  • 先入観なしでミステリーを楽しめる原作を知らない初見でも、登場人物や展開から余計な先読みをしにくく、素直に謎を追いながら観られる
  • 閉ざされた島の緊張感が続く外部との連絡や移動が限られた環境だからこそ、何が起こるのか分からない不安が最後まで途切れない

気になった点:真相を知ると気になる部分がある

  • 最後の種明かしに少し無理を感じる理屈としては理解できるものの、「そこまで都合よく成立するものなのか」と思ってしまう部分があり、真相を知ったあとに引っかかりが残った
  • 細かく考えると気になる部分がある観ている間はテンポよく進むので気になりにくいが、あとから振り返ると「ここはどうなんだろう」と思う部分もある
  • 登場人物の掘り下げはやや物足りない7人のメンバーそれぞれに役割はあるものの、限られた話数の中では一人ひとりの人物像まで深く描くのは難しく、やや駆け足に感じる

向いている人・向いていない人の特徴

向いている人

✅ 向いている人
  • 孤島・洋館のミステリーが好きな人
  • 原作を知らずに楽しみたい人
  • 先の読めない展開を楽しみたい人
  • ミステリーで騙されるのが好きな人

向いていない人

✗ 向いていない人
  • 真相にすべて納得できる説明を求める人
  • トリックの細かい部分まで気になる人
  • 登場人物をじっくり描く物語が好きな人
  • スッキリ納得できる結末を求める人

『十角館の殺人』に原作はある?

原作は、綾辻行人が1987年に発表したデビュー作『十角館の殺人』。孤島に建つ奇妙な館と、そこに集まった大学生たちを描く本格ミステリーで、「館」シリーズの第1作にあたる。

本作が長年「映像化不可能」と言われてきた理由のひとつが、原作ならではの文章を使った仕掛け。文字で読むからこそ成立する驚きが物語の重要なポイントになっている。

今回のドラマ版では、その原作の核となる部分を映像でどう見せるのかが大きな見どころ。原作を知らない状態でドラマを観た人なら、映像版を楽しんだあとに「原作ではどう描かれているんだろう?」と読み比べてみるのも面白い。

深掘り考察:この復讐は、本当に計画通りだったのか

なぜ守須=ヴァンに気づけなかったのか

守須=ヴァンという正体を見抜けなかった理由を考えると、作品が視聴者の意識を別の方向へ向けていたことが大きい。

特に効いているのが、孤島と本土を交互に描く構成だ。島では次々と事件が起こる一方、本土では江南と島田が過去の事件を追っている。二つの場所で同時に物語が進むことで、「島と本土には時間的なズレがあるのではないか」と考えやすく、視聴者の意識もその可能性へ向きやすくなる。

しかし、実際には時間差ではなく、事件はリアルタイムで進んでいた。この構成によって、島で起きていることをそのまま追っているつもりでも、時間について別の推理をしてしまう。結果として、守須=ヴァンという最も重要な部分が視界から外れていたように思う。

キャストの見せ方も、その盲点を作る要素のひとつだった。原作を知らない初見では、俳優の知名度から「この人物が重要なのでは」と判断することが難しい。さらに、存在感のある俳優が別の人物を演じていることで、自然とそちらへ意識が向きやすい。

自分自身、最後まで守須=ヴァンだとは考えなかったので、この部分は素直にうまく騙されたと感じた。

「死ぬつもり」なのに、なぜここまで周到だったのか

ヴァンは事件を起こす前から、仲間たちへの復讐を綿密に計画していた。正体を隠し、アリバイを作り、時間を計算しながら、一人ずつ追い詰めていく。そのうえ、事件の全容を記した手紙まで用意している。

一方で、ヴァン自身も最後には命を落とすつもりだったとされている。死を覚悟していたからこそ、ここまで計画を完成させたと考えることはできる。

ただ、実際の行動を見ると「自分も死ぬつもりだった人間」にしては、あまりにも周到だ。事件を成功させるための準備だけでなく、その後に何が起こるのかまで考えていたようにも見える。

もちろん、だからといって「本当は生き残るつもりだった」と断定することはできない。それでも、ここまで綿密な計画を立てた人物が、本当に最後まで自分の死を受け入れていたのか。個人的には、この部分に少し引っかかりが残った。

江南が最後に気づいた「千織の本当の気持ち」

事件が終わったあと、江南は千織との何気ない会話を思い出す。バスの中で千織が、いつかその指輪をみんなの前でつけられたらいいな、と話していたことだ。

その指輪はヴァンから贈られたものだったが、江南は当初、エラリィからの贈り物だと考えていた。そのため、千織とエラリィが交際していたのではないかという推理につながる。ところが記憶をたどり直すことで、指輪の贈り主がヴァンだったことに気づく。

父親に疎まれ、祖父と暮らしていた千織にとって、ヴァンとの関係は大きな支えだったはずだ。それでも二人の関係を周囲に話せなかったことで、千織はその幸せを一人で抱えることになった。

そして皮肉なのは、江南だけでなくヴァン自身も、そのことに気づいたのが事件のあとだったことだ。千織を死なせた原因を仲間たちに求めて復讐を始めたヴァンだが、千織が抱えていた孤独には、自分自身の行動も無関係ではなかった。

交際を隠したことが、思わぬ形で千織の死につながっていた

ヴァンが千織との交際を隠していたことは、単なる恋愛事情ではなく、事件そのものにもつながっている。

ヴァンは千織を大切に思っていたからこそ、二人の関係を仲間には明かさなかった。ところが、その「守るための秘密」が、皮肉にも千織を追い詰めることになる。

事件当日、千織はヴァンと一緒にいたいという気持ちを仲間の前で見せる。それをからかわれたヴァンは、二人の関係を否定するような態度を取ってしまう。ヴァンにとっては秘密を守るための反応でも、千織からすれば、自分との関係を否定されたように感じてもおかしくない。

そして千織は、ヴァンと一緒にいるのではなく仲間たちのいる酒の席に残る。もともと心臓に持病があり、医師からアルコールには気をつけるよう言われていたにもかかわらず、そこで酒を飲んだことが命を落とす直接的なきっかけになる。

ここで皮肉なのは、ヴァンが千織を守るためについた秘密が、結果的に千織の行動を変えてしまったことだ。ヴァンは千織の死を仲間たちのせいだと考えて復讐を始めるが、その死には、自分が千織との関係を隠し続けたことも間接的に影響している。

そう考えると、この復讐には大きな矛盾がある。ヴァンは千織を奪った相手を裁こうとした一方で、千織の死につながった出来事の一部には、自分自身の選択も含まれていたからだ。

この「守ろうとした行動が、結果的に千織を死へ向かわせてしまった」という皮肉は、ヴァンの復讐を単純な被害者の怒りではなく、どこか歪んだものにしていると思う。

海に流した瓶が、最後にヴァン自身へ戻ってくる意味

ヴァンは、これから始める復讐の計画を記したものを瓶に入れ、海へ流す。ところが物語の最後、その瓶は巡り巡ってヴァン自身の足元へ戻ってくる。

海に流した時点では、それが誰の手に渡るのかさえ分からなかったはずだ。それが復讐を終えたあと、近くにいた江南へ渡ることになる。

「最後の審判を人ならぬものに託す」と言って海へ流したものが、思いもよらぬ形で自分のところへ戻ってくる。その結果として、自分が始めた復讐を明らかにすることになる。偶然によってもたらされたこの結末には、なんとも皮肉なものを感じる。

総評:観るべきか迷っている方へ

原作を知らない初見でも、最後まで楽しめるミステリーだった。細かく考えると気になる部分はあるものの、先の展開が気になる作品としては十分楽しめた。


シネうま
シネうま

ミステリーとして楽しめる一方で、振り返ると、なんともやりきれない話だったね。

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